ごあいさつ

キース・へリングが活躍していた1980年代のアメリカは、日本の好景気とは裏腹に、インフレの激化と経済の混乱とともに治安が悪化し、まさに混沌とした社会でした。しかし反面ではアンディ・ウォーホールを筆頭にアメリカ現代美術が勢いを増していた時代でもありました。こうしたアメリカの「光と影」を背景にキース・ヘリングのアートは生まれました。へリングはストリート・アートから独特なビジュアルコミュニケーションを確立し、混沌とする社会へメッセージを投げかけたのです。
生涯を通して世界中で子どもたちとのワークショップや、壁画を含むパブリック・アート、ポスター・アート、そして社会的なプロジェクトにも力を注ぎました。当館でもエイズ・ウォークをはじめとするHIV/AIDS予防啓発のイベント、国際絵画コンクール、災害募金など、へリングの遺志を継承する活動を行っています。

2007年にここ八ヶ岳に設立した美術館は、大自然を融和し「混沌から希望へ」というテーマをもとに、日本の現代建築をリードする北川原温により設計されました。へリング作品の奥に潜む「人間が秘める狂気」や「生と死」に向き合うことのできる空間です。2015年には展示スペースが増設され、さらに大胆で鋭い感性の建築物となりました。あたかも「思考から離れて感性のみで生きる」という禅の思想をも包有するような空間で、キース・ヘリングの作品が今なお発する生命のエネルギーとメッセージを感じてくださることを願います。

中村 和男 Kazuo Nakamura

中村キース・へリング美術館 館長

  • 1946 山梨県甲府市出身
  • 1969 京都大学薬学部製薬化学科卒業、三共(現 第一三共)株式会社に入社
    新薬の開発に携わり、世界的に有名なブロックバスターメバロチン(高脂血症、家族性高コレステロール血症治療薬)の開発プロジェクトリーダーを務めた後、独立。
  • 1992 シミック(現 シミックホールディングス)株式会社代表取締役に就任し、日本初のCRO(Contract Research Organization)を立ち上げ医薬品開発支援業務を開始、現在に至る。
  • 2007 中村キース・ヘリング美術館設立。
美術館のあゆみ
  • 中村キース・へリング美術館開館。
    「キーフォレスト871228 キース・へリングの世界 混沌から希望へ」展開催。
    山梨県建築文化賞受賞。
    TOKYO FM主催 Tree of Loveポエトリー・リーディング Think about AIDSに参加。
  • キース・ヘリング生誕50周年記念特別企画展「ぼくが信じるアート。ぼくが生きたライフ。-夢・愛・希望 そして平和-」開催。
    アメリカ建築家協会優秀賞受賞。
    村野藤吾賞受賞。
    表参道ars galleryにて「キース・ヘリング展」開催。
    REAL-Living Together Club Campaign for 2008 World AIDS Dayにて、ヘリングのコンドームとHIV/AIDSの情報冊子を首都圏クラブを中心に3万部無料配布。
  • 「キース・ヘリングとポップショッブ-アートを共有するための新しいネットワーク-」展開催。
    第1回中村キース・ヘリング美術館 国際絵画コンクール開催。
    MAYA MAXXによるライブペインティング。
    第1回エイズウォーク小淵沢開催。
    北杜市より善行表彰を授与。
    JIA日本建築大賞受賞。
    Print’s Regional Design Annualに特別掲載。
    近藤等則がヘリングに捧げたCD「GOING PLACES… FOR KEITH」を発表。
    「キース・ヘリングと日本文化」クリスティーナ・ラフィン(ブリティッシュ・コロンビア大学アジア研究所助教授)・中村和男(館長)・梁瀬薫(顧問) 座談会。
  • キース・ヘリング没後20周年記念展「絆–People, Love & Peace–」開催。
    世界エイズデー特別企画「Art Against AIDS –エイズについてアートができること–」(共同企画:シミック株式会社)開催。
    「開発好明 ピラミッド–キース・ヘリング没後20周年に捧ぐ–」展開催。
    「地域におけるHIV陽性者とその支援―キース・ヘリングポスターとTシャツ展」(共同企画:山梨県立中央病院) 開催。
    日本芸術院賞受賞。
  • 「キース・ヘリングとの対話-バイブルのない教会-」展開催。
    北杜市民無料開放日を設置。
    東日本大地震の緊急募金「HEART Aid」設立、ヘリングのチャリティTシャツを製作。
    Yard WorksとDJのコラボレーション「NIWASHI nite 」開催。

    丸山純子 ZZのはなまんだら」展開催。
    エイズ&ソサエティ研究会議より《ポジティブ・ライブス》写真作品群が寄贈。
  • 「バイブルの無い教会Vol. II ポップ・神話・ワンダフルワールド」展開催。
    山梨県民特別ご招待実施。
    伊丹市立美術館(兵庫県)「LOVE POP! キース・ヘリング展 アートはみんなのもの」展開催。
    「Keith Haring Diaries:A performance」開催。
    「ニコラス・カークウッド × キース・ヘリング シューズ 」展開催。
    開館5周年を記念し、キュレーターズ・セレクションを開始。
    キュレーターズ・セレクション003「小畑多丘 B-BOY on Sky Court」
    キュレーターズ・セレクション004「Shepard Fairey・Keith Haring “THE MEDIUM IS THE MESSAGE”」
    マリンバ奏者・大森たつしコンサート「-光と闇-」開催。
  • 「キース・ヘリングとポップワールド:レトロスペクト」展開催。
    正仁親王妃華子殿下がご来館。
    「リーネ・ディゲットによるランドアート-Between Realities」展開催。
    第1回カラフルラン AIDS WALK Kobuchizawa(共同企画:認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ) 開催。
    キュレーターズ・セレクション006「yang02 : untitled 2」
    キュレーターズ・セレクション007「キース・ヘリングの記号性Vol.2 –アフリカンアートミュージアム『異形・印象・コンゴの美術』展より」
    六本木HEARTLANDにて「World AIDS Day Keith Haring Night」開催。
    映画『サウダーヂ』上映、富田克也監督と延江浩(TOKYO FM ゼネラルプロデューサー) 対談。
  • 「《Chaos to Hope》」展開催  “Untitled (Aug.15th, 1988)”人生最後の大作絵画初公開。
    平成25年度 文化庁大学を活用した文化芸術推進事業「キース・ヘリング-Who are you! : Pattern, Color, Form」展 (共同企画:山梨大学) 開催。
    表参道 ars galleryにて「Art and Fashion : Keith Haring x Patricia Field x HIRAKU」展開催。
    キュレーターズ・セレクション008「Keith Haring Muralism:Dancing at the Wall vol.1 KAMI・vol.2 SASU –Chance occurrence : toward HITOTZUKI-」
    キュレーターズ・セレクション009「山下拓也/Takuya Yamashita “museum〆an”」
    「stillichimiya+DJ KENSEI」野外ライブ開催。
  • リニューアルオープン。
    「Keith Haring Multiplexism #KeithHaringNow-多重化する二〇〇〇年代以降のキース・ヘリング像」展開催。
    「キース・ヘリングと〈HIV/AIDS Art & Activism〉」展開催 『怒りを力に―ACT UPの歴史』を上映。
    佐川美術館(滋賀県)「キース・ヘリング展 Keith Haring: Prints and other works From Nakamura Keith Haring Collection」展開催。
    fancyHIM 10th Anniversary記念イベント「セーフセックスをセクシーに」にて特別ブース出展。
    「ホップ・ステップ・アライ! in 小淵沢 ~みんなで話そう、考えよう、LGBTについて~」実施。「OUT IN JAPAN」特別展開催。
    ワークショップ「ハロウィンクラフト by Toshiaki Tashiro」開催。
  • 台湾歴史博物館にて初の海外巡回展「KEITH HARING MULTIPLEXSIM」展開催。
    「キース・ヘリング:グローイング―進化するフォルム―」展開催。
    「キース・ヘリングのショートメッセージ みんなに伝えるポスターアート」展開催。
    国内初のブロードウェイ・ミュージカル「ラディアント・ベイビー~キース・ヘリングの生涯」に協力。
    「ニューヨーク展」(主催:伊勢丹新宿店)に中村キース・ヘリングポップショップが展開。
    4組の若手DJを迎えた4日間 にわたる「ミュージック・ハングアウト」開催。
    ナショナル・カミングアウト・デー「毎日カミングアウトするおしえ」展開催。
    第29代駐日アメリカ大使キャロライン・ケネディのご夫君エドウィン・シュロスバーグ氏がご来館。
    dj hondaによる音楽イベントとSakura Fantasmaによるハロウィン・ワークショップ開催。
    中村キース・ヘリング美術館ミュージアムショップがマルイシティ横浜と新宿マルイアネックスに展開。
    山梨建築文化賞受賞。
    アメリカン・アーキテクチャー・プライズ(米国)ホスピタリティ部門金賞受賞。

建築について

当館は北川原温氏により「闇から希望へ」というテーマで、80年代の混沌とした大都市ニューヨークで生まれたキース・ヘリングのアートが放つメッセージを体感できるように空間を設計しました。
キース・ヘリングの作品をご覧いただくと同時に、空間体験を通じてキースの思考や人生、そして彼が駆け抜けた時代について想いをめぐらせ、作品の持つエネルギーを感受していただきたいと考えています。

2015年春のリニューアルオープンでは、「生命の荒々しさ」をキーワードとし、生命力がまるで自然の地形に反響するかのような斬新な設計となりました。外壁には波動をデザインし、中庭には稲妻形の壁が出現しています。

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北川原 温 Atsushi Kitagawara

建築家/東京芸術大学教授/北川原温建築都市研究所主宰

東京芸大学在学中に国際設計コンペで1位となり20代から設計活動を始め、これまでに多くの作品が世界に紹介されています。詩や音楽、現代美術などをモチーフにした個性的な発想や独創的なデザインで知られ、日本建築学会賞、グッドデザイン賞金賞、アルカシア賞ゴールドメダルをはじめ国内外の多数の建築賞を受賞。地域の文化や経済の振興に貢献する建築や都市の設計が評判を呼び、世界各地から建築展や講演の依頼を受けるなど、今最も注目されている建築家のひとり。

北川原温建築都市研究所 http://www.kitagawara.co.jp/

受賞歴

  • 2007 山梨県建築文化賞
  • 2008 村野藤吾賞
  • 2008 アメリカ建築家協会JAPANデザイン賞
  • 2009 JIA日本建築大賞
  • 2010 日本藝術院賞

フロアマップ

展示空間は「闇の空間へ広がるアプローチ」に始まり、「闇の展示室」、「ジャイアントフレーム」、「希望の展示室」に続きます。キース・ヘリングと彼が駆け抜けた時代が併せ持つ「光と影」を表現した空間から構成されています。また美術館上部の赤黒いヴォリュームは、キースの作品に通底するプリミティブな生命のエネルギーを現しています。

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